交通事故の賠償金のうち治療費と健康保険について

交通事故で怪我をした場合には、自動車保険からの損害賠償金をもって治療をすることが可能ですので、通常は健康保険はあまり使われません。
ただし、健保がまったく使えないのではなく、使ったほうがよい場合もあります。

自動車保険と治療費

交通事故で怪我をした場合には、相手が対人賠償保険に加入していれば、その自動車保険からの損害賠償金のなかに治療費が含まれます。
逆に、健康保険のほうは使わないのが通例ですので、いわゆる自由診療として、窓口での負担は割高になることになりますが、いずれ自動車保険でまかなえるのですから、そのことが特に問題になることもありません。

また、相手が任意の自動車保険に加入をしていなくても、少なくとも法律によって加入が義務付けられている自賠責保険には加入しているのがふつうですので、こちらのほうで対応するということも可能です。

健康保険を使う場合

交通事故による怪我であっても、健保がまったく使えないということは、法令のどこにも書かれていませんので、使うことは可能ですし、むしろ使ったほうがよい場合もあります。

それは、双方の過失割合のなかでも、被害者のほうの過失がかなり多く、自動車保険の保険金があまり見込めない場合です。
このようなケースであれば、窓口での３割負担が適用されますので、治療費の支払いが楽になることはたしかです。

ただし、使うにあたっては、健保組合に対して、第三者行為の届け出をする必要がありますので、忘れずに手続きをすることです。

二重取りはできない

このように、どちらの制度も利用できるのだとすれば、両方をいっしょに使って、２倍の金額を手元に得ることはできないのだろうかと考えてしまうのも当然といえます。
しかし、基本的に実際にかかった治療費よりも多くを請求することは、不正な行為であり認められません。

さきほどの第三者行為の届け出にしても、実はかかった治療費のなかで、もしも相手の加害者に請求できる部分がある場合には、健保組合が被害者本人に代わって後から請求をするという手続きのための書類であって、けっして二重取りを認める趣旨のものでないのです。

自動車保険では、治療費そのもののほかにも、怪我による精神的および肉体的な苦痛に対応した慰謝料を損害賠償金に含めて請求することが認められる場合がありますので、もしも金額的に容認できないというのであれば、示談交渉や裁判によって、この慰謝料の部分を増額するという手があります。